【永住】高度専門職の在留資格がなくても永住許可申請ができる。その理由と意外な落とし穴【高度専門職】
2026/05/18
はじめに
外国人が日本での永住許可を得ることは、人生における大きな決断です。長期的に日本に生活基盤を築こうと考える外国人にとって、永住という身分は極めて重要な選択肢となります。
その中で、近年注目を集めているのが「高度人材ポイント制」という制度です。この制度により、従来では考えられなかったような短期間での永住許可申請が可能になってきました。
特に2017年の制度改正以降、高度専門職の在留資格を保持していなくても、一定のポイント要件を満たしていれば永住許可の申請ができるようになったのです。
本記事では、この制度の仕組みや背景、そして意外と知られていない注意点について、わかりやすく解説します。
高度人材ポイント制とは何か
高度人材ポイント制は、日本が高度な知識や技能を持つ外国人材を積極的に受け入れるために設計された優遇制度です。
この制度のポイント計算には、学歴や職歴、年収などといった複数の要素が含まれます。評価基準は公開されており、外国人本人であっても、自分が何点に相当するのかを計算することができます。
制度そのものが導入されたのは2012年5月のことです。当初は独立した在留資格ではなく、「高度人材ポイント制」という優遇制度としてスタートしました。当時は「特定活動」という在留資格の枠組みを利用しながら運用されていました。
この歴史は、日本政府が国際的な人材競争に対応する姿勢を明確に示したものであり、経済成長のための重要な施策として推進されてきたことを意味しています。
在留資格「高度専門職」の創設時期と背景
高度専門職という在留資格が正式に創設されたのは、2015年4月1日です。
その前段階として、2014年6月に入管法の改正案が可決・成立しています。この改正は、日本が高度人材を積極的に受け入れる姿勢を国際的にアピールするためのものでした。
改正以前の2012年5月から2015年3月までの約3年間は、高度人材ポイント制は「特定活動」という既存の在留資格の枠組みの中で運用されていました。その後、制度が十分に機能することが確認されたうえで、正式な独立した在留資格として認められたという経緯があります。
永住許可申請の要件が大きく変わった2017年4月
永住許可申請に関する運用が大きく変わったのは、2017年4月26日のことです。
この日付を境に、従来では必須とされていた「高度専門職」の在留資格そのものがなくても、一定のポイント要件を満たしていれば、直接的に永住許可の申請ができるようになりました。
この変化は、制度の柔軟化を示すものであり、外国人にとって選択肢が増えたことを意味しています。ただし、この運用が制度当初から存在していたわけではないという点が重要です。当初は「高度専門職」の在留資格を取得することが、永住申請への近道とされていたのです。
「みなし高度人材」という新しい概念
2017年の改正では、「みなし高度人材」という新しい概念が導入されました。
これは、高度専門職という在留資格そのものを取得していなくても、ポイント計算の結果が一定水準以上であれば、高度人材として扱うというものです。
この運用により、以下のような状況の外国人が永住申請を可能にしました。
・技術・人文知識・国際業務という通常の就労ビザのままでいながら、実は過去1年時点でポイントが80点以上あった場合
・経営・管理という事業経営関連のビザで働きながら、ポイント要件を満たしていた場合
・その他の一般的な在留資格のままでも、ポイント計算上は高度人材相当だった場合
つまり、「わざわざ在留資格を変更する手続きを踏まなくても、条件を満たしていれば申請可能」という柔軟な仕組みが実現したのです。
「ア」と「イ」の条件の違いを理解する
永住許可申請の際には、申請者がどのカテゴリーに属するかによって、要件が異なります。一般的に「ア」と「イ」の二つのパターンが存在します。
パターン「ア」:すでに高度専門職として在留している場合
すでに高度専門職または特定活動(高度人材)の在留資格で日本に在留している人です。
この場合の要件は次のとおりです。
・該当する在留資格を1年以上前に取得または変更していること
・その当時からポイントが80点以上であったこと
・現在も変わらずポイント要件を満たしていることが望ましい
このカテゴリーに属する人は、すでに国から「高度人材である」という公式な認定を受けて、1年以上日本で生活している実績があります。そのため、申請手続きはより簡潔になる傾向にあります。
パターン「イ」:他の在留資格から申請する場合
技術・人文知識・国際業務や経営・管理など、高度専門職以外の在留資格で働いている人が対象です。
この場合の要件は次のとおりです。
・現在の在留資格は高度専門職ではないこと
・永住許可申請の1年前の時点で、遡ってポイント計算を行った際に80点以上であること
・現在の時点での計算でも、変わらず80点以上であること
・過去1年間は普通の在留資格で働いていたが、「実は条件を満たしていた」という事実を証明できること
このパターンの最大の利点は、わざわざ高度専門職への在留資格変更の手続きを経ずに、ダイレクトに永住申請ができるという点です。手続きの簡潔化と時間の短縮につながります。
永住許可申請が短期間で可能になった理由
通常、日本で永住許可を得るには、当該在留資格で継続して3年から10年程度の在留期間が必要とされています。ところが、高度人材の場合はこれが大きく短縮されます。
高度人材ポイント制により、以下のように短縮されます。
・ポイント70点以上:通常は1年で永住申請が可能
・ポイント80点以上:通常は3か月で永住申請が可能
この短期間での申請が可能になったのは、日本の産業競争力を維持するために高度な人材を確保することが、国家的な急務だと判断されたからです。
「高度専門職」の存在意義を改めて考える
ここで一つの疑問が生じます。
もし高度専門職の在留資格がなくても、ポイント計算で永住申請ができるのであれば、わざわざ高度専門職という在留資格を取得する意義は何なのか。
この問いに対する答えは、実は「永住申請よりも前のメリット」にあります。
高度専門職だけが享受できる4つの強力なメリット
第1のメリット:ポイント計算なしで親を呼び寄せられる
通常の就労ビザでは、家族の帯同や呼び寄せは極めて制限されています。しかし高度専門職の場合は異なります。
一定の年収条件や養育状況の要件を満たせば、本国にいる親を日本に呼んで一緒に生活することができます。小さな子どもの養育補助や、妊娠中の支援が必要な場合など、家族のサポートが必要な状況での強力な特例です。
第2のメリット:配偶者の就労が大幅に自由になる
配偶者が日本で働きたい場合、通常は学歴や職歴に関する厳しい要件をクリアする必要があります。しかし高度専門職の配偶者であれば、そうした細かい要件を満たしていなくても、フルタイムの一般的なオフィスワークに就くことができます。
これは配偶者の人生設計において、大きな自由度をもたらします。
第3のメリット:家事使用人の同伴が認められる
一定の年収などの要件を満たせば、本国からメイドやベビーシッターといった家事関連の使用人を連れてくることが許可されます。
仕事が忙しい高度人材にとって、家事負担の軽減は生活の質向上に直結します。
第4のメリット:在留期間が最初から5年
通常の就労ビザでは、最初は1年や3年の在留期間が付与されることが多く、その後の更新手続きが頻繁に必要になります。
しかし高度専門職であれば、最初から最長の5年という在留期間が一律で認められます。更新手続きの手間と心理的負担が大きく軽減されるのです。
高度専門職1号から2号へのステップアップ
高度専門職にはさらに上のレベルがあります。それが「高度専門職2号」です。
高度専門職1号として3年以上活動すれば、2号へと移行できます。2号になると、以下のような極めて大きなメリットが得られます。
・在留期間が「無期限」になり、事実上、永住者と同等の身分が得られる
・先ほど述べた「親の呼び寄せ」「配偶者の就労自由化」「家事使用人の同伴」といったメリットを、永続的に維持できる
つまり、高度専門職2号を取得すれば、あえて永住許可を申請する必要がないという状況も生じうるのです。
永住許可を申請しない選択肢が生じるケース
多くの外国人は「日本に永住すること=永住者の在留資格の取得」と考えがちです。しかし、実際には異なる選択肢が存在します。
永住者の在留資格を取得すると、日本国内での就労はあらゆる制限がなくなり、非常に自由になります。一方で、その過程で消失するメリットもあるのです。
具体的には、永住者の在留資格を取得すると「本国の親を呼び寄せる特権」が消滅してしまいます。また「家事使用人を連れてくる特権」も同様に失われます。
そのため「将来的に親を日本に呼びたい」「配偶者に自由に働いてほしい」「両親のサポートを受けながら生活したい」と考える外国人にとっては、あえて永住許可を申請せず、高度専門職2号のステータスのまま日本に在留し続ける方が、むしろ合理的だという状況が存在するのです。
これが、高度専門職という在留資格が今も存在し、重要性を失わない最大の理由なのです。
2023年4月から始まった「J-Skip制度」の登場
2023年4月からは、さらに新しい制度「特別高度人材制度(J-Skip)」が導入されました。
この制度は、従来の高度人材ポイント制とは別の枠組みとして、学歴または職歴と年収が一定水準以上であれば、すぐに「高度専門職」の在留資格が付与される仕組みです。
細かいポイント計算を必要とせず、より簡潔な要件で高度人材として扱われる外国人層が増えたことを意味しています。これは制度の多角化であり、より多くの人材が高度人材としてのメリットを享受できる環境が整ってきたことを示しています。
ブログを読む行政書士事務所のお客様へ
このように、高度専門職と永住許可申請の制度は、複雑で多面的な仕組みになっています。
申請者の現在の在留資格、ポイント計算の結果、今後の人生設計によって、最適な道は変わってきます。場合によっては「あえて永住許可を申請しない」という選択肢が、本当に最適である場合もあるのです。
外国人ご本人が「永住したいから永住許可申請」と単純に考えるだけでなく、長期的なライフプランを視野に入れた相談が重要です。
行政書士事務所では、こうした複雑な制度の仕組みを丁寧に説明し、個別の状況に応じた最適なアドバイスを提供できます。外国人材の人生に関わる重要な決定だからこそ、専門家への相談をお勧めします。
Q&A コーナー
Q 高度人材ポイント制で70点と80点では、永住申請の条件に大きな違いはありますか。
A 大きな違いがあります。70点以上なら通常は1年で申請可能ですが、80点以上なら3か月で申請が可能になります。この短縮期間の違いは、人生の大きな決断のタイミングに影響を与えることもあります。
Q 高度専門職1号から2号へアップグレードされると、何が最も大きく変わりますか。
A 在留期間が「無期限」になることが最大の変化です。これにより、事実上、永住者の在留資格に近い安定した身分が得られ、同時に高度専門職に付随する各種メリット(親の呼び寄せ、配偶者の就労自由化など)を永続的に維持できるようになります。
Q 高度専門職の在留資格があれば、必ず永住許可を申請すべきですか。
A 必ずしもそうではありません。親を日本に呼びたい、配偶者に制限なく働いてもらいたいなどの希望がある場合、高度専門職2号のまま在留し続ける方が、より利益が大きい場合があります。個別の人生設計に応じた判断が重要です。
Q 現在、技術・人文知識・国際業務のビザで働いていますが、高度専門職への変更が必須ですか。
A 必須ではありません。ポイント計算で80点以上が確認できれば、現在のビザのままで永住申請が可能です。ただし高度専門職でしか享受できないメリットを求める場合は、変更を検討する価値があります。
Q 行政書士事務所には、どのような相談をすべきですか。
A 現在の在留資格、ポイント計算、今後の人生設計(親の呼び寄せの希望有無、配偶者の就労予定など)について、包括的な相談が重要です。専門家により、最適な申請タイミングと方針を提案してもらうことをお勧めします。
おわりに
高度人材ポイント制と永住許可申請の仕組みは、一見するとシンプルに見えても、実は非常に奥深い設計になっています。
制度改正の歴史を理解し、各在留資格のメリットを正確に認識することで、初めて最適な人生設計が可能になるのです。
外国人ご本人にとって、日本での身分や生活設計は極めて重要です。だからこそ、専門的な知見を持つ行政書士事務所への相談が、極めて価値のあるものになるはずです。
あなたの人生設計に最適な道を、一緒に考えてみませんか。
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※本ページは行政書士ダイセイ法務事務所のスタッフによる「ブログ」を掲載しております。日々の思いから専門知識、業界用語、内部事情など「中の人」しか知らないここだけの情報を「簡潔に」発信しております。ぜひご参考にしてください。
行政書士は、ビザ、許認可申請、書類作成、その他行政や法務に関する手続の専門家です。何から始めてよいのか分からない場合、ぜひ行政書士にご相談下さい。無料相談も承っておりますので、ぜひお気軽にお問合せ下さい。
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