【相続】戸籍はなぜ何度も作り変えられるのか 改製の歴史と相続手続きで知っておきたい注意点【歴史】
2026/06/25
相続の手続きを進めようとして、役所で戸籍謄本を取得したところ、思いがけず古い戸籍や見たことのない形式の証明書を見せられて戸惑った、という経験をお持ちの方は少なくありません。
実は戸籍は、これまでの歴史の中で何度も大きく作り変えられてきました。なぜそのようなことが起きるのか、そしてそれが相続や身分関係の調査にどのような影響を与えるのかを知っておくことは、いざ手続きが必要になったときに大きな安心材料になります。
今回は、戸籍制度における代表的な改製の歴史を整理しながら、実務で押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
戸籍の改製とは何か
戸籍の改製とは、法律や制度の変更にともなって、戸籍の形式そのものを新しいルールに合わせて作り替えることを指します。
単なる記載内容の更新ではなく、戸籍簿という書類自体を新しく編製し直す作業であるため、全国規模で行われる場合には膨大な手間と時間がかかります。
戸籍をめぐる制度は、社会の仕組みや技術の発展に合わせてその都度見直されてきました。法律が変われば戸籍の記載方法やルールも変わり、その結果として既存の戸籍を新しいルールに合わせて作り直す必要が生じます。これが改製と呼ばれる作業の本質です。
日本の戸籍制度では、これまでに大きく分けて二つの改製が行われてきました。
・戸主を中心とした家制度を廃止し、夫婦と未婚の子を単位とする戸籍へ作り替えた改製
・紙の戸籍をコンピュータ管理に切り替えるための電子化に伴う改製
この二つの改製がいつ、どのような経緯で行われたのかを順に見ていきましょう。
家制度廃止にともなう改製と十年間の猶予期間
戦後の法改正により、戸主を中心とした家制度は廃止され、一つの戸籍には夫婦とその未婚の子までしか入れないという、現在につながる仕組みが導入されました。
この法改正自体は施行された年に効力を持ちますが、全国に存在する膨大な数の戸籍を一瞬で書き換えることは現実的に不可能でした。
そこで設けられたのが、新しい制度に基づく戸籍へ作り替えるための猶予期間です。法律の施行から十年程度の期間が設けられ、その間に各家庭の事情に応じて段階的に改製が進められることになりました。
ここで重要なのは、改製が行われるタイミングが家庭ごとに異なっていたという点です。
・猶予期間中に婚姻や出生、分籍などの届け出があった家庭は、その届け出をきっかけに新しい戸籍へ前倒しで作り替えられた
・猶予期間中に何も身分関係の変動がなかった家庭は、期限が迫るまで古い形式の戸籍がそのまま残った
つまり同じ時代に生きていた家族であっても、結婚や出生のタイミングによって、戸籍が新しくなった時期がまちまちだったということになります。これは古い戸籍を遡って調査する際に、日付のずれとして表れることがあるため、実務上知っておくべき重要な知識です。
猶予期間中に身分関係の変動がまったくなかった家庭では、結局のところ猶予期限が迫る直前になって、役所の判断によってまとめて新しい戸籍へ作り替えられることになりました。そのため、戸籍に記載されている改製の日付を見ると、猶予期間の終盤に集中して作り替えが行われている地域が多く見られます。これは当時の役所が、限られた期間の中で残された戸籍を一気に処理しなければならなかった事情を反映したものです。
猶予期限間際に行われた大規模な改製作業
猶予期間の終盤になると、それまで動きのなかった家庭の戸籍についても、期限に向けて一斉に作り替える作業が必要になりました。
旧制度の戸籍には、戸主を中心として、その父母や兄弟姉妹、さらにはおじやおば、場合によっては数十人にも及ぶ親族が一つの戸籍に記載されているケースが珍しくありませんでした。
これを新しい制度に合わせるためには、一つの戸籍を複数の家族単位に切り分け、それぞれに新しい戸籍を編製するという、想像以上に手間のかかる作業が必要でした。具体的には次のような手順が踏まれました。
・戸主夫婦とその未婚の子をそのまま新しい戸籍の中心として残す
・すでに結婚していた子の家族は親の戸籍から切り離し、独立した新しい戸籍を作る
・おじやおばなど、他の親族についても、それぞれを中心とした新しい戸籍に分離する
当時はコンピュータどころか複写機すら一般的でなかった時代ですから、これらの作業はすべて職員の手書きによって行われました。氏名や生年月日、父母の名前、続柄などの情報を一字一字書き写す作業を、全国規模で同時に進めていたわけですから、当時の役所の現場が相当な負担を抱えていたことは想像に難くありません。
あまりにも作業量が膨大であったため、すべての戸籍を新しい用紙にきれいに書き直すのではなく、それまで使っていた古い用紙をそのまま活用し、対象外となった親族の欄に取り消しの印を入れて、新しい制度に対応した戸籍として扱うという簡略化された方法が取られた地域も多くありました。
このように、見た目は古い用紙のままであっても、制度上は新しい戸籍として扱われているケースがあるという点も、戸籍を読み解くうえで知っておくと役立つ知識です。
電子化にともなう改製とその実施時期のばらつき
戸籍に関するもう一つの大きな転換点が、紙の戸籍からコンピュータによる管理への移行、いわゆる電子化です。
電子化を可能にする法改正が行われたのは平成の初め頃ですが、これも全国一律に同時実施されたわけではありません。各自治体がそれぞれの予算やシステムの準備状況に応じて、順次切り替えを進めていきました。
そのため、電子化が完了した時期は自治体によって大きく異なります。早い時期に切り替えを終えた自治体もあれば、規模の大きな自治体では区や地域ごとに数年かけて段階的に移行したケースもあり、全国すべての自治体で電子化が完了するまでには、法改正から二十年以上を要しています。
電子化によって、戸籍の見た目や書類の名称にも次のような変化が生じました。
・縦書きで記載されていた戸籍が、横書きで項目ごとに整理された形式に変わった
・戸籍全員分の証明書の名称が、戸籍謄本から全部事項証明書へと変わった
・戸籍の一部の人だけの証明書の名称が、戸籍抄本から個人事項証明書へと変わった
このほかにも、戸籍に使われる用紙の大きさが変わったり、記載項目が枠で区切られて整理されたりするなど、見た目の面でも大きな変化がありました。古い戸籍を見たことがない方が初めて改製原戸籍を目にすると、現在の戸籍とはまったく異なる形式に驚かれることも少なくありません。あらかじめこうした変化を知っておくことで、書類を受け取った際の戸惑いを減らすことができます。
電子化にともなう実務上の重要な注意点
ここで相続手続きなどに関わる方にとって特に重要なのが、電子化の際に古い情報がすべて新しいデータに引き継がれたわけではないという点です。
電子化の作業では、その時点で有効な情報だけがコンピュータ上の戸籍に移行され、すでに終わっている過去の出来事に関する情報は、新しいデータには反映されませんでした。
具体的には、次のような情報が新しい戸籍には記載されていません。
・電子化される前に死亡していた人や、離婚などによって既に除籍されていた人の情報
・電子化される前に行われた離婚や認知、養子縁組といった過去の身分関係の履歴
このため、相続関係を調査する際に、現在のコンピュータ化された戸籍だけを確認しても、すでに亡くなっている兄弟姉妹や、過去に行われた認知などの事実が見えてこないことがあります。
こうした過去の事実を確認するためには、電子化される直前の紙の戸籍を遡って取得する必要があります。この電子化前の戸籍は一般的に改製原戸籍と呼ばれており、相続人の調査や遺産分割協議を行う際には、現在の戸籍だけでなく、この改製原戸籍までさかのぼって取得することが欠かせません。
なお、改製原戸籍は自治体によって保管期間が定められており、一定の年数が経過すると廃棄されている場合もあります。古い世代の相続が関係する場合には、必要な戸籍が既に取得できない可能性も踏まえて、早めに調査を始めておくことが望ましいといえます。
また、電子化にあたっては、戸籍上で使われていた独自の字体や旧字体についても、コンピュータで扱える標準的な漢字に置き換える作業が行われました。その結果、同じ家族であっても親の世代と子の世代で、戸籍上の氏名の漢字の表記が微妙に異なって見える場合があります。これも書類を確認する際に混乱を招きやすい点ですので、注意が必要です。
相続手続きにおける戸籍調査のポイント
これまで見てきた歴史を踏まえると、相続手続きにおいて戸籍を調査する際には、次のような点を意識しておくと安心です。
・現在の全部事項証明書だけでなく、電子化前の改製原戸籍までさかのぼって取得する
・家制度時代の古い戸籍まで遡る必要がある場合は、改製の経緯によって日付の前後関係が変わることを踏まえて確認する
・同じ家族でも世代によって戸籍上の漢字表記が異なる場合があることを念頭に置く
相続人を確定させるためには、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍をつなげて確認する必要があります。これは制度の歴史を理解していないと見落としが生じやすい作業であり、特に古い世代の親族が関わる相続では、想定以上に手間がかかることも少なくありません。
戸籍の取得先や請求方法に迷う場合や、どこまで遡って取得すればよいか判断がつかない場合には、早い段階で専門家に相談することで、手続き全体をスムーズに進めることができます。
特に、相続人の中に既に亡くなっている方や、過去に養子縁組や認知などの事情がある方が含まれる場合は、戸籍をどこまで遡って確認すべきかの判断がより難しくなります。改製の歴史を理解したうえで、必要な範囲の戸籍を漏れなく収集することが、後々の手続きの遅延やトラブルを防ぐことにつながります。
Q&Aコーナー
戸籍の改製が複数回行われているのは普通のことですか
はい、特別なことではありません。家制度の廃止にともなう改製と、電子化にともなう改製という、大きな制度変更が二度あったため、家庭によっては戸籍が複数回作り替えられているのが通常です。古い世代の親族が関わる相続では、こうした改製の履歴を踏まえて戸籍を取得する必要があります。
改製原戸籍とはどのようなものですか
電子化される直前まで使われていた紙の戸籍のことを指します。電子化後の戸籍には、すでに終わっている身分関係の出来事が反映されないため、亡くなった方や離婚した方の情報を確認するためには、この改製原戸籍を取得する必要があります。
古い戸籍はどこで取得できますか
戸籍は本籍地を管轄する役所で取得することができます。本籍地が分からない場合や、何度も転籍が行われている場合は、現在の戸籍から一つずつ遡って確認していく必要があり、取得先の役所も複数にわたることがあります。
相続手続きで戸籍を集める際にどこまで遡ればよいですか
亡くなった方については、生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべて取得する必要があります。家制度時代の古い戸籍まで遡る必要がある場合もあり、改製の経緯によって取得すべき戸籍の範囲が変わってくるため、専門家に確認しながら進めることをおすすめします。
おわりに
戸籍は単なる身分関係の記録ではなく、時代ごとの制度変更を反映しながら何度も作り変えられてきた、歴史的な背景を持つ書類です。
特に相続手続きにおいては、現在の戸籍だけでは把握できない情報が、改製前の古い戸籍に残されていることが少なくありません。戸籍の取得や読み解きに不安がある場合は、早めに専門家へ相談し、必要な書類を確実にそろえることが、後のトラブルを防ぐ近道になります。
戸籍の収集や相続手続きに関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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