産業廃棄物の許可は収集運搬と処分業でここまで違う アスベストを扱う場合の注意点も行政書士が解説
2026/10/04
産業廃棄物に関わる事業を始めようと考えたとき、まず突き当たるのが「どの許可を取ればよいのか」という疑問ではないでしょうか。
インターネットで調べても、収集運搬業、処分業、中間処理、特別管理産業廃棄物など、聞き慣れない言葉が次々に出てきて、整理しづらいものです。
この記事では、産業廃棄物処理業の許可の種類と難易度の違い、行政書士に依頼した場合の費用の目安、そしてアスベスト(石綿)を扱う場合に特に注意したいポイントを、できるだけわかりやすくまとめました。
エアコン設置やリフォーム、内装、外壁工事などを手がける設備工事会社の方にも、そのまま参考にしていただける内容です。
産業廃棄物処理業の許可には大きく2種類ある
産業廃棄物処理業の許可は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(一般に廃棄物処理法と呼ばれます)に基づく制度です。
大きく分けると、次の2つの区分があります。
・産業廃棄物収集運搬業(廃棄物を運ぶ事業)
・産業廃棄物処分業(廃棄物を処理する事業)
収集運搬業は、さらに「積替保管を含まないもの」と「積替保管を含むもの」に分かれます。
積替保管とは、運搬の途中で廃棄物をいったん保管施設に下ろし、別の車両に積み替える行為のことです。
処分業も、「中間処理」と「最終処分」に分かれます。
中間処理とは、脱水、破砕、焼却、中和、選別などによって、廃棄物の量を減らしたり、安全な状態にしたりする処理を指します。
最終処分とは、埋立処分などによって廃棄物を最終的に処分することです。
つまり、「中間処理の許可」と一般に呼ばれているものは、正確には「産業廃棄物処分業(中間処理)の許可」ということになります。
収集運搬業(積替保管なし)が比較的取りやすい理由
結論からお伝えすると、積替保管を含まない収集運搬業は、産業廃棄物関係の許可のなかでは取得しやすい部類に入ります。
その理由は、主に次の4点です。
・必要な設備が、運搬車両と運搬容器(ドラム缶やフレコンバッグなど)に限られる
・施設を新たに建てないため、土地利用に関する規制や近隣住民との合意形成が原則として問われない
・車両はリース車両でも、使用する権原があれば申請できる
・審査の中心が、法人や役員の適格性と、経理的基礎、そして講習会の修了に絞られる
審査で見られるのは、たとえば次のような点です。
・役員や政令で定める使用人が、廃棄物処理法上の欠格要件に該当しないか
・債務超過など、事業を継続するうえで問題のある財務状況ではないか
・所定の講習会を修了しているか
・適切な運搬車両と運搬容器を確保できているか
設立から間もない会社であっても、これらの要件を満たせば、収集運搬業の許可を取得できる可能性は十分にあります。
なお、収集運搬業の許可は、廃棄物を積み込む場所(積込地)と降ろす場所(積卸地)のそれぞれを管轄する都道府県や政令市ごとに必要です。
たとえば、複数の都道府県をまたいで運ぶ場合には、それぞれの自治体で許可を取得することになります。
処分業(中間処理)の許可が難しいといわれる5つの理由
一方で、処分業(中間処理)の許可は、収集運搬業とは比べものにならないほどハードルが高くなります。
その理由を5つに整理してみます。
1 施設設置許可と事業許可の二段階構造
破砕機や焼却炉といった一定の処理施設は、廃棄物処理法第15条に基づく産業廃棄物処理施設の設置許可が必要です。
施設の設置許可を受けて工事を行い、完成後の検査に合格して、はじめて処分業の許可の審査に進むという流れになります。
2 立地規制と関係法令のクリア
処理施設は、どこにでも建てられるわけではありません。
都市計画法、建築基準法(第51条ただし書きの許可など)、農地法、消防法といった多数の法令を、あわせてクリアする必要があります。
3 施設基準・技術基準と環境対策
排ガス、粉じん、騒音、振動、排水などによって周辺環境に影響を与えないよう、公害防止のための設備と管理体制が求められます。
4 事前協議と周辺住民への説明
多くの自治体では、要綱などにより、申請の前段階で事前協議を行う仕組みが設けられています。
周辺住民への説明会の開催や、理解を得るための手続きが事実上必要となるケースも多く、計画が数年単位で長引くことも珍しくありません。
5 多額の事業資金と財務基盤
プラントや防音、水処理などの設備には、数千万円から数億円以上の投資が必要になることもあります。
そのうえで、事業を安定して続けられるだけの経理的基礎が厳しく審査されます。
費用・期間・行政書士報酬の目安
収集運搬業と処分業では、取得までの期間や費用にも大きな差があります。
あくまで一般的な目安ですが、次のとおりです。
・収集運搬業(積替保管なし)の申請から許可までの期間は、おおむね2〜3か月程度
・処分業(中間処理)は、計画段階を含めて2〜5年以上かかることもある
・収集運搬業の自治体への申請手数料は、新規で8万1千円が一般的(1つの都道府県または政令市あたり)
・行政書士への報酬は、収集運搬業(積替保管なし)で8万〜15万円程度、積替保管ありで15万〜30万円程度が目安
・処分業(中間処理)の報酬は、50万円から200万円以上となることもあり、個別の見積もりになるのが通常
手数料の額や審査期間は、自治体や申請内容によって異なります。
また、行政書士報酬も事務所ごとに設定が異なるため、実際に依頼する際には見積もりを確認することが大切です。
処分業の報酬が高額になりやすいのは、施設設置許可と事業許可の両方の申請が必要になることに加え、関係法令の事前調査、行政機関との協議、住民説明のサポートなど、長期にわたる伴走が必要になるためです。
アスベスト(石綿)を扱う場合は許可の区分がさらに重要になる
ここからは、建物の解体や改修、設備工事などでアスベストを含む廃棄物を扱う場合の注意点です。
アスベストを含む廃棄物は、通常の産業廃棄物より規制が厳しく、まず次の2つの区分を正しく理解することが出発点になります。
廃石綿等(特別管理産業廃棄物・飛散性アスベスト)
吹き付け石綿や、石綿を含む保温材、断熱材、耐火被覆材の除去に伴って生じる廃棄物などが該当します。
石綿の除去工事で使用した防じんマスクや養生シートなども、廃石綿等として扱われることがあります。
粉じんが飛散しやすく危険性が高いため、特別管理産業廃棄物として扱われます。
運搬するには、通常の産業廃棄物収集運搬業の許可では足りず、特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
石綿含有産業廃棄物(産業廃棄物・非飛散性アスベスト)
スレート板、窯業系サイディング、仕上塗材、Pタイルなどの撤去に伴って生じる廃棄物が代表例です。
石綿が固く固定されており、割ったり削ったりしなければ飛散しにくいため、通常の産業廃棄物として扱われます。
ただし、石綿含有産業廃棄物を運ぶ場合には、許可の取扱品目にこれを含める形で申請する必要があります。
なお、飛散性か非飛散性かの判断は、事前の調査結果が前提になります。
工事に先立つ石綿の事前調査は法令で義務づけられており、一定の場合には有資格者による調査が必要です。
アスベストの収集運搬で気をつけたい4つのポイント
石綿含有産業廃棄物を運ぶ場合には、収集運搬の基準として、次のような点に特に注意が必要です。
・破砕しないこと(割ったり折ったりせず、できるだけ原形のまま扱う)
・他の廃棄物と混ざらないよう、区分して積み込み、梱包や被覆などで飛散・流出を防止すること
・圧縮を伴う運搬方法を避け、荷台などに丁寧に積み込むこと
・委託契約書やマニフェストに、石綿含有産業廃棄物が含まれる旨を明記すること
申請の際には、こうした運搬方法や飛散防止対策について、自治体から確認を受けることもあります。
車両や容器(二重梱包用の袋、フレコンバッグなど)を、あらかじめ整えておくと安心です。
アスベストの中間処理(処分業)は実務上ほぼ現実的ではない
アスベストを含む廃棄物の中間処理は、一般的な破砕や選別のような処理が使えません。
粉じんが飛散するおそれがあるため、破砕による処理は認められておらず、溶融処理など、限られた高度な処理方法に限られます。
溶融処理には、非常に高温で処理できる炉と、厳重な排ガス処理設備が必要になり、設備投資も運転費用も極めて大きくなります。
そのため、新たにアスベストの中間処理を目指す事業者は、全国的に見てもごく一部の大規模事業者に限られているのが実情です。
実際に、石綿含有廃棄物の多くは、密閉梱包された状態で、受入れが認められた最終処分場に搬入されています。
設備工事会社やリフォーム会社にとって、自社で処分業を目指すよりも、既存の許可業者へ処理を委託するほうが、はるかに現実的で合理的な選択といえるでしょう。
設備工事・リフォーム会社が押さえたい実務の流れ
エアコン設置、リフォーム、外壁工事などで廃棄物が出る会社にとって、実務上の考え方は次のとおりです。
・自社が排出事業者として廃棄物を自ら運ぶのか、他社に運搬を委託するのかを整理する
・元請なのか下請なのかによって、許可が必要かどうかの判断が変わるため、立場を確認する
・自社で運ぶ場合は、扱う廃棄物の種類に応じた収集運搬業の許可を取得する
・アスベストを含むおそれがある場合は、許可の品目に石綿含有産業廃棄物を含めるか、特別管理産業廃棄物の許可が必要かを検討する
・処理は、受入れ可能な許可業者や最終処分場に委託する
許可が必要なのに無許可で運搬してしまうと、廃棄物処理法違反として重い罰則の対象になるおそれがあります。
反対に、必要のない許可を取ってしまうと、費用も手間もむだになります。
最初の整理が、その後の事業の安定に直結するのです。
よくある質問(Q&A)
Q 産業廃棄物の収集運搬業許可は、設立したばかりの会社でも取れますか。
A 設立間もない会社でも、欠格要件に該当せず、経理的基礎や車両、運搬容器、講習会修了などの要件を満たせば、取得できる可能性はあります。
ただし、財務状況の確認資料などは自治体ごとに求められるものが異なるため、事前の確認が欠かせません。
Q 中間処理の許可は、設備さえ整えれば取れるのでしょうか。
A 設備だけでは足りません。
施設設置許可、立地規制のクリア、事前協議、周辺住民への説明、経理的基礎など、複数の条件を満たす必要があり、計画から許可まで数年かかることもあります。
Q アスベストを含む建材の廃棄物を運ぶには、どの許可が必要ですか。
A スレート板などの非飛散性のものは、石綿含有産業廃棄物を含む形での産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
吹き付け材など飛散性のもの(廃石綿等)は、特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可が必要になります。
Q 複数の都道府県にまたがって運ぶ場合、許可は一つで足りますか。
A いいえ、積込地と積卸地を管轄する自治体ごとに、許可が必要です。
そのため、運搬範囲を事前に整理してから申請計画を立てることが重要です。
Q 行政書士に依頼すると、どこまで任せられますか。
A 許可要件の確認、申請書類の作成、自治体との調整、申請の代理などを任せられます。
要件を満たしているかどうかの事前診断だけを依頼することも可能です。
Q 自社で運ぶ場合でも、許可は必ず必要ですか。
A 自社が排出事業者として、自ら出した廃棄物を運ぶ場合は許可が不要となることがあります。
ただし、下請の立場で工事を行っている場合などは扱いが異なるため、個別に確認が必要です。
まとめ まずは自社に必要な許可の見極めから
産業廃棄物の許可は、収集運搬業と処分業とで、難易度も費用も期間も大きく異なります。
収集運搬業(積替保管なし)は、要件を整えれば中小企業や設立間もない会社でも取得が現実的です。
一方、処分業(中間処理)は、資金力、立地、行政手続き、地域との調整など、あらゆる面で高い壁があります。
さらにアスベストが関わる場合は、廃石綿等か石綿含有産業廃棄物かの区分、運搬基準、処理ルートの確保など、注意点が増えていきます。
だからこそ、事業計画の早い段階で、自社に本当に必要な許可を見極めることが大切です。
当事務所では、産業廃棄物収集運搬業の許可申請に関するご相談を承っております。
「自社の場合はどの許可が必要なのか」「アスベストを扱う予定があるが、何から始めればよいか」といったお悩みも、お気軽にご相談ください。
お問い合わせ、お待ちしております。
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※本ページは行政書士ダイセイ法務事務所のスタッフによる「ブログ」を掲載しております。日々の思いから専門知識、業界用語、内部事情など「中の人」しか知らないここだけの情報を「簡潔に」発信しております。ぜひご参考にしてください。
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