【ビジネス】外国人取締役は日本に住まずに会社経営できるのか 会社法と入管法から見る注意点【外国人】

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【ビジネス】外国人取締役は日本に住まずに会社経営できるのか 会社法と入管法から見る注意点【外国人】

外国人が日本で会社を経営する場合の在留資格を整理する 非居住での経営から複数社経営、令和7年10月の要件改正まで

2026/09/26

外国人の方が日本で会社を経営しようとする場合、置かれている状況によって検討すべきポイントは大きく変わってきます。日本に住まず海外から経営指示だけを行いたいというケースもあれば、すでに経営・管理の在留資格を得て日本で会社を経営している方が、新たに別の会社を興したいというケースもあります。また、令和7年10月16日には経営・管理の在留資格の基準そのものが大きく改正されており、これから会社を設立しようとする方にとっては見逃せない変更点となっています。今回は、こうした複数のケースを整理しながら、実務上のポイントを解説していきます。

取締役が日本に住んでいなくても会社は作れるのか

まず、在留資格をまだ持たない外国人の方が、日本に居住せず海外から会社を経営するケースから見ていきます。

日本の会社法上、取締役が日本国内に住所を持っていることは要件とされていません。全員が海外に居住している状態であっても、日本国内に株式会社を設立し、登記を行うこと自体は制度上想定されています。

以前は、発起人(株主)または代表取締役のうち少なくとも1名が日本国内に住所を有している必要があるという運用がなされていた時期がありました。しかし2015年の商業登記に関する法改正以降は、取締役・代表取締役の全員が海外居住者であっても、法務局において設立登記が受理される取り扱いに変わっています。そのため、在留資格の有無だけを理由に会社法上の設立が認められないという扱いにはならないと考えられます。

海外からのリモート経営、実務上の2つのパターン

在留資格を取得せず、海外からすべての経営指示を行う形態を維持する場合、実務上はおおむね次の2つのアプローチが取られているようです。

・完全リモート経営(単独型)  外国人取締役が海外から、メールやWEB会議システム、業務管理ツールなどを通じて、日本国内の従業員や外注先へ直接指示を出す方法です。

・日本側パートナーの活用(併用型)  登記上は外国人取締役のみとしつつ、実際の現場運営や行政手続きの代行を、日本国内の税理士や行政書士、ビジネスコンサルタントなどの専門家に委託する方法です。

この形態が向いている事業、慎重な検討が必要な事業

非居住のままのリモート経営は、すべての業種で同じようにメリットを享受できるわけではありません。

・向いている傾向がある事業  ITサービスの開発・運用、ソフトウェアの受託、越境ECや貿易業など、日本国内に物理的な拠点や従業員を必要とせず、契約や決済の多くをオンラインで完結できる事業です。

・慎重な検討が必要な事業  店舗を構えた小売業や飲食業、工場を伴う製造業など、日本国内に物理的な拠点を置き、現場で従業員を指揮する必要がある事業です。この場合、非居住のままでは現場管理に限界が出やすく、経営・管理の在留資格の取得や、日本居住者への現場運営の委託を検討したほうが現実的な場合が多いでしょう。

非居住のまま経営する場合のメリットとリスク

非居住のまま経営する形態には、在留資格の取得が不要になりやすい点、日本国内に住居を構える必要がなく固定費を抑えられる点といったメリットがある一方で、次のようなリスクも存在します。

・法人口座の開設が難航しやすい  犯罪収益移転防止法やマネーロンダリング対策の観点から、日本国内に居住する代表者がいない法人については、大手の都市銀行や地方銀行での口座開設を断られるケースが少なくないようです。海外送金に比較的強いネット銀行や、外資系銀行での開設を検討する必要が出てくることがあります。

・本店所在地の確保が必要  取締役自身が日本にいなくても、会社の本店所在地は日本国内に置く必要があります。バーチャルオフィスを利用する場合、銀行口座開設のハードルがさらに上がる可能性がある点にも注意が必要です。

・税務上のリスク(恒久的施設、PE)  日本国内に実体(オフィスや従業員)が存在する場合には、日本での法人税課税の対象となり得ます。海外の本社や個人との間で行われる資金のやり取りについては、二重課税を避けるため、日本と相手国との間の租税条約の内容を確認しておくことが望ましいでしょう。

日本人パートナーを共同で取締役にする方法は有効か

こうしたリスクへの対策として、日本人の協力者に共同で取締役になってもらうという方法も、実務上はよく検討される選択肢の一つです。法人口座の開設や、オフィス契約、行政からの郵便物への対応など、日本居住者がいることで初めてスムーズに進む手続きの多くが解消しやすくなると考えられます。

一方で、代表権を付与した場合、その日本人が単独で契約を締結したり、口座から資金を動かしたりする権限を持つことになるため、信頼関係が崩れた際には経営権が分散するリスクも生じます。こうしたリスクを抑える工夫としては、次のような方法が一般的に取られています。

・出資比率(株式)は外国人側が保有する  会社の所有権を外国人取締役側が保有していれば、株主総会を通じて日本人取締役を解任することが可能になり、根本的な経営権を手放さずに済むと考えられます。

・日本人は代表権のない取締役にとどめる  外国人のみを代表取締役とし、日本人は取締役にとどめる方法です。全員が海外居住である場合よりは口座開設が有利になりやすく、代表権の濫用リスクも抑えられます。

・銀行口座の管理権限を分ける  口座開設の手続き自体は日本人の協力者に担ってもらいつつ、ネットバンキングのパスワードなどは外国人取締役側が管理し、実際の送金指示は外国人側が行う体制にしておくといった方法も考えられます。

入管法上の位置づけと注意すべき境界線

入管法(出入国管理及び難民認定法)は、あくまで「日本国内における外国人の活動」を規制するための法律とされています。そのため、外国人が日本国外にいながら経営の指示を出す行為そのものは、日本の入管法の適用対象には基本的に含まれないと理解されています。また、会議への出席や契約の調印などを目的として、短期滞在の資格で日本に数日から数週間滞在し、その間に取締役としての業務を行うことについても、認められている商用目的の活動の範囲内とされる場合が多いようです。

ただし、短期滞在の資格で長期間とどまり現場の日常業務まで行う場合や、短期滞在を繰り返して実質的に日本に定住しているとみなされる場合には、資格外活動や不法就労といった入管法違反を問われるリスクが高まるとされています。目安として、年間180日以上の滞在は特に慎重にチェックされる傾向があるといわれていますので、注意が必要です。

設立手続きにおける特有の注意点

日本国内に住民票を持たない外国人が取締役となる場合、通常であれば必要となる印鑑証明書を用意することができません。そのため、本国の公証人や日本国内の大使館などで発行してもらうサイン証明書(署名証明書)で代用することになります。外国語で作成された証明書には、日本語の訳文を添付する必要がありますが、翻訳者について特別な資格は求められていません。

すでに経営・管理の在留資格を持つ方が新たに会社を興すケース

ここからは、視点を変えて、すでに一定規模の日本の会社の役員として来日し、経営・管理の在留資格を得ている方が、その会社とは別に自ら代表取締役となって新しい会社を設立し経営を行いたいという場合を見ていきます。

元の会社の役員を続けながら新会社を経営することは可能か

すでに経営・管理の在留資格を持っている方であれば、別途自ら代表取締役となって新しい会社を設立し、その経営を行うこと自体は制度上想定されています。日本国内での複数会社の役員兼任や、兼業での経営活動自体が一律に禁止されているわけではありません。

ただし、新会社の設立・経営を始めたことをもって、直ちに現在の経営・管理の資格が失効するわけではないものの、次のような点には注意が必要とされています。

・実体的な経営活動の確保  経営・管理の在留資格は、申請時に対象となった事業の経営・管理を安定的に行うことを前提に許可されています。新会社の経営に集中するあまり、元の会社での実質的な経営・管理活動がおろそかになると、次回の更新時に「元の会社での経営実体がない」と判断されるリスクが生じ得ます。

・報酬・兼務の合理性  双方の会社から受ける役員報酬や職務内容の切り分けが明確であり、双方の会社において十分な経営活動を行う時間的・実質的な余裕があるかという点も、審査の観点になるとされています。

元の会社を辞任し新会社のみで在留資格を維持する場合の要件

元の会社を辞任し、新しく設立した会社の経営のみに基づいて経営・管理の在留資格を維持ないし更新しようとする場合には、令和7年10月16日に施行された基準省令の改正後の要件を踏まえておく必要があります。

この改正により、経営・管理の在留資格の許可基準は、従来の「資本金の額または出資の総額が500万円以上、または常勤職員を2名以上雇用すること」のいずれかを満たせばよいという扱いから、次のような複数の要件をすべて満たす必要がある形へと大きく見直されています。

・資本金等の額(事業規模)  資本金等の額が3,000万円以上であること(法人設立の場合は払込済資本金等が対象とされています)。

・常勤職員の雇用  資本金要件に加えて、日本人や特別永住者、永住者・日本人の配偶者等といった身分系の在留資格を持つ常勤職員を1名以上雇用していること。就労系のビザを持つ外国人従業員は、この人数にカウントされないとされています。

・日本語能力要件  申請者本人または常勤職員が、JLPT N2相当以上など、相当程度の日本語能力を有していること。

・経歴要件  申請者本人が関連分野の学位(博士・修士・専門職学位)を有しているか、事業の経営または管理について3年以上の実務経験を有していること。

・事業計画書の専門家評価  提出する事業計画書について、中小企業診断士や公認会計士、税理士など、経営に関する専門的な知識を有する者による評価を受けたものを提出すること。

・事業所の確保  独立した実体のある事業所が確保されていること(自宅と兼用の事務所は、原則として認められにくいとされています)。

新会社を設立して経営に専念する場合は、これらの要件を複合的にすべて満たす必要がある点に注意が必要です。多額の出資や人件費、経営体制の確保が前提となるため、事業計画の初期段階から資金計画とあわせて検討しておくことが望ましいでしょう。

経過措置についての留意点

なお、この改正には経過措置が設けられており、施行日である令和7年10月16日より前から、同一の会社に基づいて経営・管理の在留資格で在留している方については、施行から3年後にあたる令和10年10月16日までの間に行う在留期間更新許可申請では、新基準を満たさないことのみを理由に不許可となることはないとされています。もっとも、これはあくまで既存の会社をそのまま継続する場合の取り扱いであり、元の会社を辞めて新たに設立した会社を基盤に在留資格を維持しようとする場合には、新基準が全面的に適用される点には注意が必要です。制度の詳細や運用については今後変更される可能性もあるため、実際に検討される際は最新の公表情報をあわせてご確認ください。

既存の会社に役員として迎えられる場合の要件

新たに会社を設立するのではなく、すでに一定規模を有する既存の会社に役員として参画し、経営・管理の在留資格を取得ないし変更する場合であっても、改正後の基準省令が同様に適用されます。この場合は、受け入れ先となる会社の資本金等がすでに3,000万円以上に達している必要があり、不足していれば増資などの対応が必要になるとされています。そのほかの要件(常勤職員の雇用、実務経験や学歴、報酬の適正性、日本語能力、事業計画書の専門家評価、事業所の確保など)も、新設会社の場合とおおむね共通しています。

既存会社に役員として迎えられる場合には、これらに加えて、すでに在籍している役員との役割分担が客観的に説明できるかという点も重視される傾向があるようです。既存の代表取締役や他の役員がいる中で新たに役員として加わる場合には、業務内容や責任範囲が重複せず整理されていることを、資料をもって示せるようにしておくとよいでしょう。

役員以外の地位でも経営・管理の在留資格は取得できるか

役員としてではなく、部長や工場長、支店長といった管理職の地位であっても、経営・管理の在留資格を得ることができる場合があります。入管法上、経営・管理の対象となる活動には、事業の経営だけでなく事業の管理も含まれているためです。この場合、単なる現場作業や一般事務ではなく、事業の運営・管理に関する意思決定やラインの指揮監督を行う立場であることや、事業の管理に関する3年以上の経験(大学院で経営等を専攻した期間を含む場合があります)などが審査の対象になるとされています。

なお、「自分自身が雇用される立場なのだから、常勤職員の雇用要件は不要ではないか」という考え方については、注意が必要です。常勤職員の雇用要件は、申請者個人の属性に対する要件ではなく、受け入れ先となる事業(会社)そのものの規模に対する要件とされています。そのため、部長などの管理職として申請する場合であっても、会社側が資本金3,000万円以上かつ常勤職員1名以上を雇用しているという体制を備えていることが前提になる点は変わりません。

高度専門職1号ハの取得可能性

新設会社の代表取締役として、経営・管理の上位に位置づけられる高度専門職1号ハ(高度経営・管理)への変更や取得を目指せる余地もあります。この資格を得るためには、経営・管理の標準的な要件を満たしたうえで、学歴、職歴(経営・管理の経験年数)、年収、役職などを点数化するポイント計算表で70点以上(80点以上でさらに優遇措置が拡大されます)に達している必要があるとされています。年収については、年齢にかかわらず300万円以上という基準はあるものの、ポイント計算上は実際にはより高めの年収設定が求められることが多いようです。

改正後の経営・管理の基準自体が、資本金3,000万円以上、常勤職員1名以上という高い水準になったことで、この基準をクリアできる会社であれば、高度専門職1号ハのポイント基準も同時に満たしやすくなる面があるといえます。適切な事業計画書や客観的な裏付け資料を用意し、十分な役員報酬を確保できれば、高度専門職1号ハの許可を目指すことも十分に現実的な選択肢になり得ます。取得できれば、5年の在留期間が一律に付与されたり、要件を満たせば通常より短い期間での永住許可申請が可能になったりするなど、いくつかの優遇措置が受けられるとされています。

役員の任期満了と在留資格への影響

最後に、経営・管理の在留資格を得て役員を務めている方が、任期満了によってその地位を退く場合の取り扱いにも触れておきます。

任期満了に伴い役員を退任した場合であっても、直ちに在留資格が失効し退去強制の対象になるわけではありません。ただし、放置すると在留資格の取り消し対象となるリスクが生じるため、次のような対応が必要になります。

・14日以内の届出義務  役員を退任した日から14日以内に、出入国在留管理局へ契約機関に関する届出を提出する必要があります。

・活動未実施による取消リスク  経営・管理の活動を正当な理由なく継続して3か月以上行わない場合、在留資格の取り消し制度の対象となり得るとされています。

・在留期間の更新への影響  在留カードの有効期限が残っていても、任期満了後に再任や他社での就任がない場合は、次回の在留期間更新許可申請を通過することは難しくなります。

日本への在留を続けたいと考える場合、置かれている状況に応じて、次のような選択肢を検討することができます。

・元の会社または他社で再度役員等に就任する  株主総会等での再任手続きを行う、または資本金・常勤職員などの基準を満たす別の会社から役員や管理職として迎えられることで、経営・管理の在留資格を維持できる場合があります。

・新たに自ら会社を設立して経営する  この場合は前述の改正後の新基準(資本金3,000万円以上、常勤職員1名以上、経歴要件、事業計画書の専門家評価など)をクリアする必要があります。

・他の就労系在留資格へ変更する  経営者・役員という立場を離れ、日本国内の企業に従業員として雇用される道です。技術・人文知識・国際業務などへの変更が代表的な選択肢とされています。

・身分系の在留資格へ変更する  日本人や永住者と結婚している場合などは、日本人の配偶者等や永住者の配偶者等といった、就労制限のない身分系ビザへの変更が選択肢となり得ます。

・特定活動への変更  退任後すぐに次の受入れ先が決まらない場合には、就職活動や起業準備のための一時的な在留資格として、特定活動への変更が認められるケースもあるようです。

まとめ

外国人の方が日本で会社を経営する場合の在留資格の考え方は、非居住のまま海外から経営するケースと、すでに経営・管理の在留資格を持ちながら新たに会社を興すケースとで、検討すべきポイントが大きく異なります。特に令和7年10月の基準省令改正以降は、新たに会社を設立して経営・管理の在留資格を取得ないし維持しようとする場合、資本金3,000万円以上や常勤職員1名以上の雇用など、以前よりも高い水準の要件をクリアする必要が出てきています。ご自身の状況や事業計画によって最適な選択肢は変わってきますので、具体的な検討を始める段階で、行政書士などの専門家に一度相談しておくと、手続きをスムーズに進めやすくなるでしょう。

Q&A

Q. 外国人取締役が日本に一度も来ないまま、会社を設立することはできますか。

A. 手続きの多くは郵送やオンラインでのやり取りで進めることが可能とされており、来日せずに設立まで完了させることも実務上は行われています。ただし、法人口座の開設については、金融機関によっては来日や面談を求められる場合もあるため、事前に候補となる金融機関へ確認しておくことをおすすめします。

Q. 令和7年10月の改正前から経営・管理の在留資格を持っている場合、すぐに資本金3,000万円へ増資しないといけませんか。

A. 施行日より前から同一の会社に基づいて在留している場合は、施行から3年後にあたる令和10年10月16日までの間の更新申請では、新基準を満たさないことのみを理由に不許可となることはないとされています。ただし、その後の更新では新基準への適合が前提となる可能性が高いため、早めに増資や雇用体制の見直しを検討しておくと安心です。

Q. すでに経営・管理の在留資格を持つ人が新会社を設立する場合、必ず資本金3,000万円が必要になりますか。

A. 元の会社の役員を続けながら新会社の経営に関わるだけであれば、直ちに在留資格へ影響が及ぶわけではありません。ただし、元の会社を辞任し、新会社のみに基づいて在留資格を維持ないし更新しようとする場合には、経過措置の対象外となり、資本金3,000万円以上を含む改正後の新基準が全面的に適用されるとされていますので注意が必要です。

Q. 日本人の協力者が見つからない場合、どのような選択肢がありますか。

A. 協力者が見つからない場合でも、海外送金に対応したネット銀行や外資系銀行での法人口座開設を検討する、あるいは税理士や行政書士に運営面のサポートを依頼するといった方法があります。状況に応じて複数の選択肢を組み合わせることも可能です。

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